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NICT、プロドローンと共同でドローンによる動画データの完全秘匿中継技術を開発
投稿日 2017年3月22日 20:47:10 (ニュース)
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国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の佐々木雅英 主管研究員を中心とする量子ICT先端開発センターのメンバーは、株式会社プロドローンと共同で、撮影ドローンが写した動画データを、中継ドローンを介して、電波が直接届かない場所であるカバレッジホールまで完全秘匿化したまま、無線局免許不要の市販Wi-Fi機器を用いて伝送する技術を開発した。
データ欠損が頻繁に生じるドローン通信において、カメラ映像を低遅延かつ安全に中継伝送するため、データ欠損の検知と効率的な鍵同期フレーム構造を開発し、真性乱数を用いたワンタイムパッド暗号による完全秘匿データ中継を可能にして、屋外フィールド実験と屋内実験によって実証した。
撮影・中継ドローンを複数機配置すれば、さらに、高秘匿ネットワークを広域、かつ即座に提供することができるようになるため、今後は、重要施設の監視などの用途に広く活用できると期待される。なお、同研究は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本 喜久 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として実施された。
ドローンは、様々な場所を自在に移動しながら撮影ができるため、地形やその他の危険状況により、人が直接行けない場所や重要施設での監視や警備への活用が期待されている。しかし、このような用途では、撮影ドローンが通信インフラの圏外まで飛行したり、建物や構造物の陰に回り込んだりなど、地上局から電波が直接届かない場所(カバレッジホール)において撮影しなければならない場合も多く存在する。そのような場合、撮影ドローンからのデータ通信が途切れないように、適切な中継局を設ける必要がある。
一方、ドローンの制御やデータ通信に使われる無線通信は、傍受や干渉、電波妨害の影響を受けやすく、運用面の安全性に課題がある。現状では、非常に簡易な暗号化しか行われていないケースが多く、ドローン通信の情報セキュリティ対策は十分ではない。これまで、情報セキュリティを確保しつつ、カバレッジホールを解消できる安価で安全な中継技術は開発されていなかったという。
NICTとプロドローンは、2016年4月に秋田県仙北市にて、ドローンの制御通信をワンタイムパッド暗号によって完全秘匿化する実証実験に成功した。今回、この技術を発展させ、制御信号のみならず、容量の大きい動画データまでも完全秘匿化し、さらに、カバレッジホールまで中継ドローンを介して安全にデータ中継する技術を開発。
データ中継には、安価で無線局免許不要な市販Wi-Fi機器(指向性アンテナ付属)を使用。また、ワンタイムパッド暗号化は、データと鍵のビット列の足し算で済むため、計算遅延が極めて小さく、小型の基板上での実装が可能。その安全性は、どんな高い計算能力を持つ計算機でも解読できないことが証明されているという。これらの技術を組み合わせることで、ドローンによる動画データの完全秘匿中継を低コストで実現することが可能になった。
具体的な技術としては、撮影ドローンと中継ドローンは、離陸前にあらかじめ地上局と、真性乱数を暗号鍵として共有しておき、制御通信やデータ通信をパケットごとにワンタイムパッド暗号化して、通信を完全秘匿化する。一方、ドローン通信では、通信路の特性変動が大きく、データ欠損も頻繁に生じるため、大量の暗号鍵をドローンと地上局間でパケットごとに正確に同期させ、正しく更新する仕組みが必要となる。
そこで今回、各パケットにデータ欠損を検知する符号化と、通信路特性に応じて最適なパケット間隔で鍵同期信号を送信する技術を開発。これにより、データ伝送効率の低下を最小限に抑えつつ鍵同期を行い、次々に新しいカメラ映像を低遅延で送り続けることが可能になった。
屋外フィールド実験
2017年2月22日に愛知県豊田市郊外のテストフィールドにおいて行われた実験は、ドローンによる上空からの監視業務を模擬し、不審者に扮した人(被写体)を追う撮影ドローンからの映像を、中継ドローンを介して地上局で受信するという状況で行われた。
撮影ドローンが、監視対象区域でありながら樹木や構造物などにより、地形的に地上局から直接見ることができない位置まで自律飛行し、不審者(被写体)を撮影した動画データをワンタイムパッド暗号化して、50m~200m離れた中継ドローンに伝送した(200mはテストフィールドの敷地限界)。
中継ドローンは、暗号化データを指向性アンテナで受信し、約10m離れた地上局に中継し、地上局は撮影ドローンと同じ暗号鍵を用いて動画データを復号した。2.4GHz周波数帯のWi-Fi機器を用いて、撮影ドローンから中継ドローンを介し地上局まで毎秒1,200万ビットの速度(12Mbps)で、監視カメラの動画データを完全秘匿化したまま中継伝送できることを実証した。
自律飛行時以外の制御通信についても、前述の仙北市での図書配送実験時と同様に、ワンタイムパッド暗号化で守られており、制御の乗っ取りを防いでいる。また、真性乱数を生成する物理乱数生成器とドローン間での暗号鍵の受渡しには、どんな高い計算能力を持つ計算機でも改ざんできない機器認証方式を採用し、不正アクセスや、なりすましを防いでいる。
屋内実験
2017年2月26日に東京都小金井市のNICT本部4号館講堂(20m x 17m x 天井高 7m)において行われた実験は、災害により倒壊危険が生じた重要施設内での探索業務を模擬し、室外の地上局から視覚的に隔離された撮影ドローンで取得した画像データを、中継ドローンを介して、地上局で受信するという状況で行われた。
建屋内を撮影ドローンによって探索するというシナリオの下、ドローン間及び中継ドローンと地上局間の距離は、共に約10mと近距離としつつ、さらに、撮影ドローンと地上局間にパーティション(幅 7.8m x高さ1.8m)を設置し、地上局へは撮影ドローンからの電波が直接届かないという想定で実験。
暗号化された動画データ通信と動画再生手順について屋外フィールド実験と同様に実施し、通信速度12Mbpsで動画データを完全秘匿化したまま中継伝送できることを実証した。
【関連リンク】
・情報通信研究機構(NICT)
・プロドローン(PRODRONE)
Source: IoTニュース
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